本サイト「サバイバル∞人類学」を開設するにあたり、エディターとして私、高市ともこと人類学との関係を、簡単に紹介します。
アイドルという期待、偏見による苦境
私が12才の頃、当時ローラースケートで社会現象にもなったジャニーズグループ光GENJIに会いたいというアイドルヲタク根性と、親に経済的負担をかけずに東京に住むための手段として、オーデションに応募してみたらトントン拍子にアイドルになりました。
デビューしたものの大ヒットを飛ばすことなく、前々から早稲田大学に行きたかった私は、高校2年の途中で芸能界を辞めて、実家がある鹿児島へ戻って受験勉強を始めることに。
数年ぶりに戻った地元では、一家転住ではない私は「問題児」として、ほとんどの高校から転入試験を受けることも拒否されました。
唯一受け入れてくれた学校は地元では評判が悪く、その学校の制服を着て塾へ通うと「バカ」「挫折者」として後指を差されるため、トイレで私服に着替えて塾へ通う…という偏見や差別による苦境が待っていました。
「人間失格者」の自分を変えたもの
それから中学高校と芸能活動中に疎かになっていた勉強の時間を取り戻すべく浪人生活を送りました。しかし完璧主義だった私は、入試で1問目が解けないとパニックを起こして過呼吸になり他の問題が頭に入らない…というあり様で3浪突入。
多浪生の私は志望大学から「不合格」の刻印を押されることイコール「人間失格者」だと思い込んでいたところ、両親から「海の外の違う世界を見てきなさい」と勧められ、初めての海外旅行でヨーロッパ周遊を体験して衝撃を受けました。
それから明治大学の商学部へ入学し、アジア諸国との貿易とマーケティングを学んでいたときに、「競合他社に勝つためには、現地の歴史や文化を熟知することが大事」という教授の言葉が響きました。
当時アジアとの貿易を行う会社の経営者になりたかった私は、起業する前に世界の歴史や宗教、さまざまな外国文化の知識を養うために、就職活動をせずに早稲田大学へ進学することにしたのです。
人より倍近く長い大学生生活の一方で、バックパッカーとして約30数カ国を旅しました。1泊2万円もする先進国から1泊100円で寝泊りできる発展途上国まで巡り多くの文化に触れると、何かに対する「よい」「わるい」の線引きは、その地域や人によってバラバラだということを実感し、完璧主義や潔癖症だった自分の性格や価値観が崩壊、どんどん変化していったのです。
他人と向き合う、文化人類学との出会い
そんなときに、文化人類学という学問と出会いました。
直接文化に触れて、フィールドワークというかたちで長期滞在をしながら現地の人たちと衣食住を共にして信頼や愛情を築きながら調査する。そして、自分の持っている経験や感性を活かしながら分析し、その延長線で自分自身に向き合う機会をも与えてくれるのが文化人類学です。
文化人類学は、世の中を救う
「文化人類学は、世の中を救う」と確信した私は、文化人類学者になるために大学院修士課程から博士課程まで、約6年間研究活動を続けました。同志の仲間とディスカッションしたり、一日中本を読んだり、時にはタイの山奥に生息する少数民族の村で過ごしたり……それは、新しい発見と感動の毎日でした。
「不安定」だらけの私は、不幸なのか?
しかし資金不足や震災の影響により、研究を継続することが困難となり大学院を退学。人より遅く社会人になって、出版、広告、教育機関など職を転々とした後、最近フリーランスでライターや編集の仕事をはじめました。
結婚してない。正社員じゃない。貯金がない。
「不安定」な自分は、ハッピーに生きられない?
「安定」すれば、幸せになれる?
そもそも「安定」や幸せって何?
かつて夢中で研究活動をしたものの惜しくもリタイアした文化人類学という学問を掘り起こしながら、その答えを追求してみたくなりました。
「当たり前」を疑ってみること
「当たり前を疑う」人類学の視点には、社会を深層から理解し、日々の生活に役立つ術がたくさんあります。
昨今では、人類学の理論や調査手法を、マーケティングやデザインなどに導入している企業もあります。私が大学院を辞めて最初に働いたマーケティングリサーチ会社では、文化人類学の「エスノグラフィー」という手法を活用して商品開発をしていましたし、WEB制作会社では、UXデザイン設計に人類学のリサーチ方法を導入するケースもあります。
人類学を、わたしたちの日常に
「アカデミアと一般社会をつなぐ媒介者または翻訳者となり、人類学的な知見を社会で幅広く活用する方法を紹介することで、少しでも生きやすい世界を創りたい」という想いを込めて、本サイトをはじめました。
サバイバル∞人類学で、今を生き抜く
人類学は、現代社会を生き抜く術の宝庫である。
「サバイバル∞人類学」は、そう考える私の造語です。
人類学を手にして、一緒に今を生き抜きましょう。