物事を観察し、時にはそこに参加しながら詳細に記述していくという手法は人類学の十八番。そうした手法を用いて書かれた本書では、『人類学は「役に立つ」のか。人類学者とは何者なのか。』といったことも取り上げられています。実学としての人類学について考えるヒントとなる一冊です。

なぜ私たちはイノベーションにまで効率を求めてしまうのだろう?
今日のイノベーションの現場を、立場や専門の異なる著者3名がエスノグラフィックに記述し、対話的に思索した野心的著作
「イノベーションという言葉の響きからは,斬新で綿密な事業計画,カラフルなオフィスや活発なブレイン・ストーミング,何かが降りてくるような気づきの瞬間といった華やかで知的な印象がつきまとう。しかし,実際の現場でなされていることは,その都度訪れる新たな局面に対して,立ち止まって静かに思索し,ねばり強く対話を続ける地道な営みではないだろうか。本書では,そういった決して洗練されてはいない側面にこそ光を当ててみたい。」(本書「まえがき」より)

■著者
北川 亘太 著
比嘉 夏子 著
渡辺 隆史 著
■出版年月日
2020年10月20日
■ISBN
9784779515019
■判型・ページ数
A5・250ページ
■定価
本体2,700円+税
■出版社
ナカニシヤ出版
■目次
序 章 北川亘太・渡辺隆史・比嘉夏子
1 本書の執筆経緯とねらい
2 フィールドとしてのイノベーションの現場
3 イノベーション業界の形成を理解する補助線としての「デザイン」
4 イノベーションとデザインにおけるUCI Lab.
5 各部の視点の特徴
第1部 イノベーションに隠された現場の格闘 渡辺隆史
はじめに
01 UCI Lab.について
02 プロジェクトの入り口の格闘:「総合的」とはどういうことか
03 「わかる」ための格闘:「統合分析」で起きていること
04 アイデア創造の格闘:「身体性」を伴う具体化の意味
05 商品化に向けた格闘:発売されるまで「一貫性」をいかに担保するか
06 健全な格闘のために必要なもの:UCI Lab.にとっての「合理的」とは
おわりに
第2部 UCI Lab.と人類学者による対話と協働 比嘉夏子
はじめに
07 人類学者が「イノベーションの現場」に入るとき
08 協働における試行錯誤と柔軟性
09 協働的なリサーチとは何か
おわりに
第3部 制度としてのUCI Lab. 北川亘太
はじめに
10 制度としてのラボ
11 制度としてのラボの形成
12 対話の制度化
おわりに――制度経済学からみた地道な取り組み
終 章 比嘉夏子・北川亘太・渡辺隆史
1 イノベーションの「地」を描く
2 「対話的関係性のエージェント」としてのUCI Lab.
3 「地道」で終わりなき運動に向かって