東日本大震災から10年が経ちましたが、福島の原発の問題は未だ解決していません。先日も汚染水の海洋放出を日本政府が承認したことで世界中で様々な議論が巻き起こっています。本日ご紹介する『放射能の人類学− ムナナのウラン鉱山を歩く』は閉山したウラン鉱山をめぐるエスノグラフィー です。閉山後の現地で何が起こっているのかを知ることで、廃棄物をめぐる問題を考えるためのひとつの視座を得られそうです。
閉じられたウラン鉱山の過去、現在、未来
中部アフリカに位置するガボン王国。その南東部の都市ムナナ にはかつてウラン鉱山があった。フランス植民地時代に発見されたこの鉱山は、独立後もフランスが設立した鉱山会社を通じて独占的に使用される仕組みが維持されていたが、採算に見合う鉱脈がなくなったことで1999年に閉山した。本書『放射能の人類学− ムナナのウラン鉱山を歩く』では、社会人類学者である著者がムナナでのフィールドワークを基に、現地での放射能廃棄物をめぐる状況を描いている。
■編者
桑山敬己
■出版社
青土社
■発売日
2021年3月6日
■定価
2,200円(本体2,000円+税)
■ISBN
978-4-7917-7362-6
■目次
はじめに
第1章 熱帯雨林の中のウラン鉱山
リーブルヴィル
夜行列車
病院の廃墟
全てはゆっくりにしか進まない
見るものと見られるものが交叉する
第2章 ゴーストタウン
闇の中の廃墟
フランスの核開発とムナナのウラン
三つの人工湖
記録と知覚
姿を消した蝶
第3章 再びムナナへ
隠し扉
IDのフォトコピーは持ってる?
半年も経たないうちに世界は変化している
彼らは知っていたと思う
フィールドノートを書きながら
第4章 歩きながら触れて触れられて考える
茂みの中に消える人たち
ウラン製錬工場の瓦礫を埋めた辺り
湖の小道には蛇がいる
閾を超えるとそこは別世界だった
禿げた土地
第5章 見えない過程
全てが同時進行しながら存在している
国家装置は働き続ける
輝かしい未来から不確かな未来へ
災禍の尺度
初めて聞いた話とは思えない
第6章 時間
心の生活
覆土の下には
説明ではなく経験の方へ
下流へ
どんな世界が現れるのだろう?
おわりに
謝辞
参考文献
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