世界的な流行から1年以上が経過した現在でも依然として私たちの生活に大きな影響をもたらしている新型コロナウイルス。人類学はこのウイルスの感染拡大をどのように見ることができるのでしょうか。『新型コロナウイルス感染症と人類学ーパンデミックとともに考える』はこの状況を深く理解するための26名の研究者による論稿が収められています。
人類学はどのようにパンデミックに貢献できるか
本書『新型コロナウイルス感染症と人類学ーパンデミックとともに考える』では、新型コロナウイルス感染症の拡大がパンデミックであるが故に見られる特徴を「パンデミック性」と呼んでいる。これまで人類学が行ってきた世界各地での研究の蓄積を活かして、世界のそれぞれの地域ではパンデミックをどのように経験しているのか、さらにそこにはどのような共通性や多様性がみられるのか検討することでパンデミックとはどのようなものかについて検討している。また、世界各地のパンデミックの状況をカタログ的に集めた「パンデミックについての人類学」だけにとどまらず、パンデミックに端を発した人びとの対応から人間や社会や世界についての新たな理解を模索する「パンデミックとともにある人類学」といったアプローチを念頭に、人類学の発展をも目指している。
■編者
浜田明範、西真如、近藤祉秋、吉田真理子
■執筆者
浜田明範、西真如、近藤祉秋、吉田真理子、内藤直樹、大北全俊、桜木真理子、北川真紀、石野隆美、田中志歩、緒方しらべ、岡野英之、澤野美智子、吉田尚史、奥知久、島薗洋介、飯田淳子、木村周平、濱雄亮、堀口佐知子、宮地純一郎、照山絢子、小曽根早知子、金子惇、後藤亮平、春田淳志
■出版社
水声社
■発売日
2021年4月
■定価
3,520円(本体3,200円+税)
■ISBN
ISBN13: 978-4-8010-0563-1
■目次
【目次】
はじめに 浜田明範・西真如・近藤祉秋・吉田真理子
時間、環境、複数種
人間以上の存在とともに考える新型コロナウイルス感染症 吉田真理子
パンデミックの時間と笑い
――未知のものへの想像力に関する比較から 内藤直樹
新しい日常のための実験法
―パンデミックと自閉症者の脳神経学的環境 西真如
科学技術と自由
新型コロナウイルス感染症
――行動変容というリスク・マネジメントと責任 大北全俊
アメリカ合衆国での抗体検査をめぐる期待と懸念 桜木真理子
感染者数とは何か
――新型コロナウイルス感染症の実行と患者たちの生成 浜田明範
感染拡大と生活の再編
コロナ危機下の生活「再編」をめぐるエスノグラフィ
――移住・自給自足・オフグリッド 北川真紀
フィリピン・マニラにおける感染症対策と二つの「ホーム」 石野隆美
バングラデシュにおける新型コロナウイルス流行と所得者層の生活変容
――現地NGO・当事者との関わりから 田中志歩
こんなことはいくらでもあったし、これからもある
――ナイジェリアの都市で暮らす人びととパンデミック 緒方しらべ
SNSを通じた共有と拡散
米国アラスカ州における新型コロナウイルスへの対応
――自然資源豊かな地域ゆえのアイディアと課題 近藤祉秋
ソフトなロックダウン下での「怯え」
――タイにおける社会的経験としてのコロナ禍 岡野英之
韓国の「コロナ19」禍に見る包摂と排除
――インターネット上で繰り広げられた世論を事例として 澤野美智子
医療者の視点
国境をまたげなくなる人びと
――ミャンマー在留邦人から考えるコロナ禍の医療 吉田尚史
「立ちすくみ」からの脱却
――コロナ禍の介護現場におけるケアと安心をめぐる協働的民族誌の試み
奥知久・島薗洋介
パンデミック対策をローカライズする
――日本におけるプライマリ・ケア医の実践
飯田淳子・木村周平・濱雄亮・堀口佐知子・宮地純一郎
照山絢子・小曽根早知子・金子惇・後藤亮平・春田淳志
おわりに 浜田明範・西真如・近藤祉秋・吉田真理子
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