日本社会でも関心の高まる女性への暴力。そうした痛ましい事件がニュースで報じられることもあります。本書『ジェンダー暴力の文化人類学』では、世界各地の事例から多様な女性への暴力の形を理解することから、その解決の糸口を探ります。
多様な文脈での「女性への暴力」を考える
ジェンダーは性差を意味するが、そのあり様は地域や社会によって様々である。本書『ジェンダー暴力の文化人類学』は、女性への暴力に焦点をあて、各地のフィールドワークで得られた当事者達の語りから、複雑化する暴力の構造を描き出す。
■編者
田中雅一 ・ 嶺崎寛子
■出版社
昭和堂
■発売日
2021年2月26日
■定価
本体6,930円(本体6,300円+税)
■ISBN
9784812220184
■目次
序 章 ジェンダー暴力とは何か?(田中雅一・嶺崎寛子)
第Ⅰ部 家族の名誉にかけて
第1章 南アジアにおける強制結婚 ― 規定婚、児童婚、非人間との結婚(田中雅一)
第2章 二重の暴力 ― ネパールにおける売春とカースト(藤倉康子)
第3章 名誉は暴力を語る ― エジプト西部砂漠ベドウィンの血讐と醜聞(赤堀雅幸)
第4章 ジェンダー暴力の回避 ― エジプトのムスリムの試み(嶺崎寛子)
第5章 噂、監視、密告 ― モロッコのベルベル人にみる名誉と日常的暴力の周辺(齋藤剛)
第6章 復讐するは誰のため? ― ギリシャのロマ社会における名誉をめぐる抗争(岩谷彩子)
第Ⅱ部 国家に抗するジェンダー
第7章 揺れ動くジェンダー規範 ― 旧ソ連中央アジアにおける世俗主義とイスラーム化(和崎聖日)
第8章 抑圧された苦悩の可視化 ― 韓国の烈女と鬼神(澤野美智子)
第9章 ある「母」の生成 ― アルゼンチン強制失踪者の哀悼と変わりゆく家族(石田智恵)
第10章 痛みと記憶 ― チリ・軍政下を生き抜く女性たち(内藤順子)
第11章 自由、さもなくば罪人 ― 性の多様性をめぐるインド刑法の攻防(山崎浩平)
第Ⅲ部 ディアスポラ社会の苦悩
第12章 名誉をよみかえる ― イスタンブルの移住者社会における日常の暴力と抵抗(村上薫)
第13章 トランスローカルなジェンダー暴力 ― インド・パンジャーブ出身女性の経験(東聖子)
第14章 暴力と移動が交錯する生 ― メキシコにおける中米女性移民たち(佐々木祐)
第15章 揺らぐ家父長制 ― ノルウェーのアラブ系難民女性の定住過程(辻上奈美江)
第16章 越境する「強制結婚」 ― ノルウェーのパキスタン系移民女性とNGO活動(小牧幸代)
第17章 仕事・恋愛・暴力が交錯する場 ― カラオケパブで出会うフィリピン人女性と日本人男性(田川夢乃)